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フランス進出は「EU+フランス語圏」への拡張も!設立要件・市場参入の要点をまとめて整理
2026.01.07
経営企画・マーケティング支援

フランス進出の魅力と要点、日系企業の進出・展開事例、そして会社設立で抑えるべきポイント、進出までの進め方と初期の事業検証までをまとめて解説します。
最終更新日:2026年1月7日
目次
- はじめに:フランス進出の魅力とは
- 1. フランス進出のための要点
- 1) 進出目的の明確化
- 2) 法務・税務・規制への対策
- 3) 市場参入の方針
- ご参考)フランス進出の全体設計:主な展開パターン
- 2. 日系企業の進出事例
- 事例1:ユニクロ - 初期は「アンテナショップ」として展開し、その後拡大
- 事例2:楽天 - 買収後すぐに変えず、段階的なリブランドで市場獲得
- 事例3:サントリー - フランスを契機にヨーロッパ市場のシェアを拡大
- 3. 会社設立で押さえるべき要点
- 1) 会社設立の入口:手続きは「オンライン一元化」が基本
- 2) 最低資本金:会社形態によっては「1€」であるものの必要な投資額を用意
- 3) 会社の登記簿謄本「Kbis」(カビス)
- 4. 進出までの進め方と費用
- 5. 初期検証の進め方
- 1) EU一般データ保護規則(GDPR)に沿ってランディングページを活用する
- 2) ランディングページへの記載事項
- 3) 行動解析に関する同意取得・オプトアウト
- まとめ:市場参入の設計・事業検証が成否を分ける
筆者:株式会社imakara代表取締役 戸部亮介
大学在学中の2003年-2004年に南フランスAubenasの現地中学校にてフランス人への日本語教師を務める。2006年-2014年に株式会社サイバーエージェント(2年半の北京駐在/現地事業責任者)、2015年-2023年に株式会社LIFULL(3年半のジャカルタ駐在/現地法人代表)、2023年-2025年に株式会社CogSmartに在籍した後に株式会社imakara設立。LIFULLでは国際事業・経営企画を担当し、フランスを含む国際事業の管理・支援も実行。フランス語検定2級保有。はじめに:フランス進出の魅力とは
「フランス」への進出の魅力は約6,860万人の「フランス国内市場」だけに留まりません。フランスはEUの主要国の1つであり、同時にフランス語圏(フランコフォニー)への起点ともなります。
パリ周辺(イル=ド=フランス)はヨーロッパのビジネス・イノベーション集積地で日本企業の拠点も多く、パリ地域には400社超の日本企業が進出しており、パリを拠点にヨーロッパでの事業を拡張していくことができます。なお、フランスには830以上の日本企業の拠点があります。
また、フランス語を話す人口は世界で約3億2,100万人です。中長期的にはアフリカの人口拡大と共に2050年までに最大で7億人まで成長する可能性があると言われており、フランス語経済圏は中長期的に成長市場であるとも言えます。
出典:La langue française dans le monde(OIF)、フランス基礎データ(外務省)
なお、フランスは国としてスタートアップ育成を推進しており、政府の「La French Tech」などを軸に、起業・スケール支援のエコシステムが整備されています。パリのStation F(世界最大級のスタートアップ・キャンパス)をはじめ、投資家・大企業・起業家が集まる場を活用することで、現地スタートアップとの事業共創やPoCにつなげやすい点も魅力です。
JETROとStation F、そしてHEC Paris(ビジネススクール)の三者が連携したプログラムがあり、日本のスタートアップがヨーロッパ展開を進めるための枠組みもあります。
出典:Supporting start-ups(La mission French Tech)、パリにある世界最大のスタートアップ支援施設「STATION F」が世界から注目されるいくつもの理由、JETRO TEAMS UP WITH STATION F & HEC PARIS TO LAUNCH PROGRAM FOR JAPANESE STARTUPS

1. フランス進出のための要点
フランス進出を成功させるためには、次の3点を同時に設計する必要があります。
1) 進出目的の明確化
進出目的は主に以下の3点が考えられるかと思いますが、その短期/中長期での優先順位により法人の作り方や設計が変わってきます。
フランス国内市場での事業拡大を目的とする
ヨーロッパにおける中核拠点とし、パリ圏を起点にEU各国に展開していく
将来的なフランス語圏(アフリカ含む)展開への足掛かりとする
2) 法務・税務・規制への対策
法務・税務・規制等で、事前に考えうるリスクを最小化するための対策を行います。
税務は法人税に加え、販売形態によってVAT(デジタルB2Cは特に)や源泉、移転価格、PE(恒久的施設)該当などが論点になり得ます。事業実態・商流等に合わせて、早めに整理しておくと手戻りを減らすことにつながります。
また、現地拠点に人を置く場合は滞在許可/就労許可(例:passeport talent等)と雇用契約・労務ルール、給与計算の体制整備を行う必要があります。
規制においては2018年に施行された「EU一般データ保護規則(GDPR)」等への対策を講じていく形になります。
3) 市場参入の方針
「誰に・何を・どのように販売するか」といった事業戦略・マーケティング方針により、市場参入に必要なリソースは変わります。特に初期では速やかに事業検証を実施し、失敗・撤退リスクを最小化できる進め方が望ましい、と言えるでしょう。
ご参考)フランス進出の全体設計:主な展開パターン
主な展開パターンは以下3つで、目的に応じて組み合わせていくことも選択肢になります。今後の事業計画に沿って、短期/中長期での優先順位を決めていくと良いでしょう。
パターンA:フランス国内での事業立ち上げ(現地売上が主)
展開例:B2CやB2Bの現地販売を行い、現地法人で採用・運営まで完結する。
要点:現地に根付いて展開するパターンであると言える。
パターンB:ヨーロッパの中核拠点(HQ・営業・R&Dなど)
展開例:ヨーロッパ全体の中核として、パリ圏にHQやR&Dを置く。
要点:ヨーロッパ全体での競争力を高めていく展開であると言える。
パターンC:中長期でのフランス語圏(特にアフリカ)展開の起点
展開例:フランスを起点に、アフリカへ市場展開の足場をつくる。
要点:フランス拠点を起点に中長期的な成長市場であるアフリカに展開するパターンであると言える。

2. 日系企業の進出事例
事例1:ユニクロ - 初期は「アンテナショップ」として展開し、その後拡大
ユニクロはフランス初店舗を2007年に開設し、まずはコンパクトな店舗を「アンテナショップ」として展開し、2025年末時点でフランス国内で約30店舗規模まで拡大しています。
パリには店舗だけではなく、R&Dセンターがあり、元エルメスのデザイナーであるクリストフ・ルメール氏が率いています。人気のコレクション「ユニクロU」はパリのR&Dセンターより世界中に発信されており、市場・商品開発の両面において重要な拠点となっています。
示唆:最初から「フルスケール」ではなく、「小さく始めて、大きく育てる」出典:UNIQLO opens its first French store!!(Fast Retailing)
事例2:楽天 - 買収後すぐに変えず、段階的なリブランドで市場獲得
楽天は2010年にフランスのEC「PriceMinister」を買収し、フランス市場に足場を作りました。買収後に「楽天」ブランドにすぐに統一せず、現地のブランドや顧客体験を維持しながら検証・運用を重ねました。2018年に「Rakuten France」へのリブランドを本格化し、公表情報では会員数 1,300万人規模まで拡大しました。
示唆: ブランド統一を急がず、現地で腰を据えてブランド・信頼を築くことで市場を獲得事例3:サントリー - フランスを契機にヨーロッパ市場のシェアを拡大
サントリーはフランスで大人気の炭酸飲料「オランジーナ」を販売するOrangina Schweppes Group(OSG)を2009年に買収し、フランスを起点にヨーロッパでの事業基盤(ブランド・流通・現地運用)を獲得しました。
その後、2021年、ロンドンにSuntory Beverage & Food Europe(SBFE)が設立され、ヨーロッパを中心とした飲料事業の経営戦略の立案・経営管理を担っています。フランスでの展開を契機に、ヨーロッパ全体で市場シェア拡大に向けて各国に必要な拠点を展開していると言えるでしょう。
示唆: ヨーロッパでは販売のための仕掛け(ブランド、流通、オペレーション、市場ニーズに合わせた商品開発力、等々)が重要であり、フランスはその契機になり得る。出典:SBFE Sustainability Report 2021/22(PDF)
3. 会社設立で押さえるべき要点
1) 会社設立の入口:手続きは「オンライン一元化」が基本
フランスでは、会社の設立・変更・廃業手続きがオンラインの「単一窓口(guichet unique)」に集約されています。基本的に「オンラインでの手続きが原則」という前提で、進め方とスケジュールを決めていくと良いでしょう。
出典:Guichet des formalités des entreprises(Service-Public Entreprendre)、Le cadre juridique(formalites.entreprises.gouv.fr)
フランスの主な事業運営形態は以下の通りです。
EI(entreprise individuelle)
個人事業主で、法人を設立しない形態になります。
SAS(Société par Actions Simplifiée)
簡易な株式会社で、パートナー2名以上での設立。定款で柔軟な運営が可能。
SASU(SAS Unipersonnelle)
SASと同様に簡易な株式会社で、一人法人の場合での会社形態。
SARL(Société à Responsabilité Limitée)
有限責任会社で、パートナー2名〜100名で設立可能。中小企業や家族経営に適しており、取締役は1名以上。
EURL(Entreprise Unipersonnelle à Responsabilité Limitée)
SARLの単独株主版。
SA(Société Anonyme)
株式会社で、大企業向き。株式市場への上場も視野に入れることができる。最低資本金37,000ユーロ、原則2名以上の株主が必要。
その他、拠点の持ち方としては法人の他にも以下のような選択肢をとることができます。現地法人が必要になるかどうかの判断軸は、「フランスで継続的な事業実態(人・拠点・契約)が生じるか」どうかです。
支店(succursale)
支店は通常、親会社の延長として活動する拠点となり、法人格を持たず、契約・債務は親会社に帰属します。その一方で、フランスでの拠点としての登録・税務・雇用が論点になります。
駐在員事務所
駐在員事務所の業務は原則的に調査・連絡機能に限られますので、契約締結や請求主体になる場合は支店や現地法人の検討が必要になります。
代理店/販売パートナーと連携した展開
代理店・販売パートナーで販売主体を外部に置く形は、実態と責任範囲(契約・請求・在庫・雇用)を踏まえた上での判断となるでしょう。

2) 最低資本金:会社形態によっては「1€」であるものの必要な投資額を用意
フランスの会社形態により必要な資本金は異なり、SAS・SASU・SARL・EURLは、1€より設定可能です。
出典:Constituer et déposer le capital social d'une société(Service-Public Entreprendre)、Société par actions simplifiée (SAS) : ce qu'il faut savoir(Service-Public Entreprendre)
ただし、銀行口座開設・取引先審査・採用など事業立ち上げにあたり、1€ではほぼ全てのケースで不足しますので、資本金は事業計画に沿った必要な投資額とセットで決めるのが現実的です。
3) 会社の登記簿謄本「Kbis」(カビス)
フランスでは、登記簿謄本はKbis(カビス)と言われています。また、会社の登録情報(RNE)に基づく登録証明がKbisの代替となり得る旨も案内されています。
その他、必要書類は会社形態や役員構成等で変わりますが、一般的には「定款(ドラフト)」「役員/株主情報と本人確認書類」「所在地の証明」「資本金の払込に関する証憑」「登録申請に必要な各種情報(事業内容、代表者、連絡先等)」等を準備します。
日本側で用意できる書類(身分証明書・役員情報等)と、現地で手配する書類(住所、口座等)を切り分けて、早めに不足を洗い出すと良いでしょう。
銀行・取引先・行政などの手続きでどの証明が求められるかを、早い段階で確認しておくと手戻りを減らせます。
出典:Les documents justifiant l’existence d’une entreprise(INPI)、Attestation d’immatriculation… ou « extrait RNE »(entreprises.gouv.fr)
4. 進出までの進め方と費用
会社設立手続き自体はオンラインで進められますが、特に「オフィスの住所確定」「書類整備」「銀行口座開設(KYC)」等がボトルネックになりやすく、想定より期間が延びることがあります。
販売・雇用・決済まで含めて稼働させる場合は、契約書等の法務面の整備、EU一般データ保護規則(GDPR)に基づく情報整備、請求・VAT等の準備も並行して進め、全体スケジュールにバッファを持たせると良いと考えられます。
手戻りを防ぐためにも以下の内容を抑えながら進めていくと良いでしょう。
市場参入方針:ターゲット、提供価値、価格、チャネル、代替品等を踏まえた方針
法人形態と目的整理:会社形態、法人としての目的(販売/拠点/R&D、等)
個人情報保護の対策:個人情報保護等に関してGDPRに沿って対策
お金関連のロジ:銀行口座・決済手段・請求・VAT等の準備
体制構築:会社の立ち上げにあたり必要な人材を採用して体制を構築
フランス市場進出にあたっての費用は「法人設立・口座開設・翻訳/公証・専門家(法務/会計)費用、等」と「現地運営費(人件費・社会保険・オフィス、等)」に大別されます。
特に初期は、採用の有無と拠点コストで費用総額が大きく変動するため、初期検証フェーズでは費用を抑えながらスピード感を持って進めた上で、検証確度に合わせて段階的に投資を増やす設計が有効だと考えられます。

5. 初期検証の進め方
市場参入にあたっての初期検証をWebのランディングページで行うと検証費用を抑えた上で「小さく始めながらボトルネックを潰し、大きくしていく」という進め方ができます。
フランスに事業としての実態がなくても一定の条件を満たせば、現地法人なしで日本より初期検証を行うこともできます。例えば、相談予約や資料請求を通してリード獲得を行う、といったことができます。
ランディングページを、ターゲットのペルソナに合うフランス人に見ていただき、リアルな感想や声を聞くことも貴重なマーケットインサイトを得ることができるでしょう。
その一方で、フランスでの事業としての実態が伴う場合は、現地法人が必要となります。実態が伴うケースは、現地スタッフが継続的に業務を行う、オフィスを構えて商業活動を行う、支店や現地法人が契約・請求・提供主体になる等のケースです。(※駐在員事務所は原則、契約主体になりません)
いずれにしても、以下の通り、EU一般データ保護規則のGDPRに準拠する必要があります。
1) EU一般データ保護規則(GDPR)に沿ってランディングページを活用する
EU域外企業でも、EU域内の個人に対して商品・サービス提供を行う、またはオンライン行動履歴を解析や追跡する場合、EU一般データ保護規則(GDPR)の適用対象になり得ます
出典:Guidelines 3/2018 on the territorial scope of the GDPR(EDPB)、REGULATION (EU) 2016/679(EUR-Lex / PDF)
GDPRの主なポイント:
EU向けに提供する場合は、対象地域(EU/フランス等)や提供範囲(配送/対応言語/決済通貨等)を明示しておくと、誤解やトラブルを減らせます。
ランディングページでフォームを設置する場合、「プライバシー通知」(収集目的、法的根拠、保存期間、権利、連絡先等)が必要になります。
出典:REGULATION (EU) 2016/679(EUR-Lex / ELI)
EU域外事業者がサービスの提供を行う意図がある場合や、広告・アクセス解析タグ等でオンライン行動履歴を取得する場合は、EU内代理人(Representative)の書面指定が必要となるケースもあります。例外条件などもあり、ケースによりますので、個別に専門家に確認を取ると良いでしょう。
出典:REGULATION (EU) 2016/679(EUR-Lex / consolidated PDF)
2) ランディングページへの記載事項
フランスでは、事業者の運営するWebサイト・ページに掲載すべき情報として「事業者情報」、「一般販売情報」、「個人情報の取扱い」等があります。
ランディングページだけの展開でも「誰が運営しているか」「どのような取引になるのか」「データはどのように扱われるか」が明確ではない場合はリスクとなりますので、明確に記載するべき項目となります。
出典:Mentions obligatoires sur le site internet d'une société(Service-Public Entreprendre)、Mentions sur votre site internet : les obligations à respecter(economie.gouv.fr)
3) 行動解析に関する同意取得・オプトアウト
フランスの監督機関CNILは、オンライン上の行動解析に関する方針として「拒否が同意と同じくらい容易であるべき」という方針をとっています。
このため、Google Analytics等を始めとして、広告タグやアクセス解析タグを設置する場合は、同意ボタン・拒否ボタン・オプトアウトボタンを分かりやすく設置する必要があります。
出典:Refusing cookies should be as easy as accepting them(CNIL / EN)

まとめ:市場参入の設計・事業検証が成否を分ける
フランスを含めて海外進出にあたっては、その市場参入の設計と事業検証が成否を分けます。
市場参入の設計にあたっては、目的に合わせた会社形態の選択と、必要リソースの確保を行うことが重要です。事業検証においては、特に初期は考えうる仮説の検証を速やかに、少ない費用で行うことで、ボトルネックを解消していく進め方が望ましいと考えられます。どのような形であっても法務・税務面での対策を行うことが重要です。
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※本記事は一般情報です。個別案件の法務・税務等の判断は専門家と連携してご確認ください。
参考リンク(本文で引用した主要ソース)
Guichet des formalités des entreprises(Service-Public Entreprendre)
Constituer et déposer le capital social d'une société(Service-Public Entreprendre)
Société par actions simplifiée (SAS) : ce qu'il faut savoir(Service-Public Entreprendre)
Mentions obligatoires sur le site internet d'une société(Service-Public Entreprendre)
Mentions sur votre site internet : les obligations à respecter(economie.gouv.fr)
Guidelines 3/2018 on the territorial scope of the GDPR(EDPB)
Refusing cookies should be as easy as accepting them(CNIL / EN)
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Strong customer authentication (SCA) for PSD2 now in force(European Commission)
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